万年壺の最も典型的な姿。白抜き花文には褐色の花芯を施し、緑釉を掛ける。緑の発色が美しく、夢のような情感を溢れさせている。
万年壺とは万年の糧を入れるという意味を持つとされ、明器として墓に入れられたものであるが、中に穀物が入って出土して例は知られていない。初唐期の万年壺はパルメットやメダイヨンなどの貼花文で飾られているが、盛唐期になると単彩・二彩・三彩など低火度釉の色彩が華やかな作品となり、複数の釉を流し掛けしたり、点彩を施したりするものは釉が混ざらないように工夫されている。唐代に流行した染色技術を応用、絨毯か花氈の意匠にヒントを得たものであろう。この手の万年壺は壺の首部と蓋の宝珠は褐釉とするのが普通であり、東京博物館蔵類品が知られる。
本品は宝珠も花文で装飾されているのが珍しい。唐三彩を手本として作られた奈良三彩の壺では、万年壺の形よりも同時代の須恵器の壺に近い形をしている。奈良三彩を作った人たちにとっては唐三彩の形よりも、その鮮やかな色彩に強く惹かれていたとわかる。華麗な色彩・豊満な姿、まさに情感を溢れさす唐代の象徴とでもいうべき作例である。共蓋の完好が嬉しい。
参照 : CS-132
参照本 : 平凡社版 中国の陶磁B 三彩 |