林東窯。
下膨れの桃型の胴部には五弁の花と蜜蜂を貼り付け三層の菊花に紐が付く被蓋を伴なう。全体に透明釉が流れ涙痕の釉だまりが美しく見られるのは定窯同様。何と愛らしい心安まる作品であろうか。厳しい風土の蒙古高原に生きる騎馬民族の花・虫・鳥など生命あるものへの憧れが小さな作品に込められ凝縮された品といえよう。同時代定窯との関連が窺われる興味ある作品でもある。(定窯には貼花は知られていない)近時内蒙古自治区の出土品が増え北魏から遼時代にわたっての新資料が入手できる事。本品のような1000余年前の繊細な品が蓋も供なり無傷で入手できるのも発掘ならではであって喜ばしい。定窯の影響を強く受けた林東窯は遼代後期の官窯と考えられている。珠玉の掌中美品といえ、メリハリの利いた力強い造形は、文房具としての使用で机上の清浄感を一段と高めてくれよう。一世を風靡した定窯も徽宋が「定窯の白磁はボウあり、用いるに堪えず」として伏せ焼きで生ず口縁の釉が乗らないことを嫌い急速に衰え、同時に北から攻め入った「金」に職人も連行され定窯の伝統も途絶え遼に引き継がれたといえよう。 |