鹿の悲鳴と狼の唸り声が聞えそうなほど、鹿の頭と尻に1頭づつの狼が、尾には蛇が噛み付く闘争文を薄銅板の打ち出しで表現している。それぞれの体表には微細な鑿でもって毛並みを刻している。動物闘争文はスキタイを始めとする北方遊牧文化特有なもので、漢時代四川省昆明を中心として栄えた填国に影響した。厚い鍍金が美しい輝きをみせる。薄く造られ裏には止め具・フックは無く、衣服・革帯等の飾具と考えられる。こうした動きの一瞬をとらえる技術の確かさが填国彫刻の特徴。蛇は大地の象徴と考えられている。前109年填国は漢に従属するために朝貢し、武帝から金印を授けられ「填王之印」が残る。(57年には後漢の光武帝が「漢委奴国王」印を授かっている。)青銅器の蝋型鋳造は春秋時代に応用されていたという論もあるが、このように自在な蝋の応用と造形は漢民族の文化にはなかったことで、南方あるいはインドなどの影響が考えられている。
参照 : DK-066 |