北朝時代を代表する大型の尊。しかし焼成された窯は明らかではない。尊とは古代の盛酒器の総称で銅製のものが多い。長い頸には貼花文が2段に分けて貼り付けられ、上段には2ヶの耳が付き宝相華文があり、下段には獣面とばん蟠龍が型で作られ、貼り付けられている。肩には六つの耳が付き、胴体部分には下向きの三層の蓮弁がある。胴中央部や脚部の蓮弁の先端には青磁釉が溜まり、深い暗緑色になっている。仏教が重視する花である蓮花文が強調されており、仏教が隆盛したこの時代の特徴を示している。
中国歴史博物館には本品同様、蓋を伴なう品が。北京故宮博物館には蓋のない品が知られる。(この2点は墓から出土したことにより、北斉(6世紀中葉)時代の作品と知れた)
器形は雄大で、堆塑・貼花・彫貼等の技法を全て応用している。初期の北方青磁のモニュメンタルな作品。この時代豊かな経済的基盤を持ち、代々官吏となって安逸な生活が保証されたことから、貴族の間では財力を誇示するために美食競争が繰り広げられた。魏晋南北朝時代は上流貴族が食事に異常なまでの贅を尽くした。飲食に関する奢侈の例が多く記されている。青磁蓮花尊は5世紀から7世紀にかけて流行した副葬用明器であり、唐三彩が明器の主流となると姿を消した。
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