汝窯。
イスラム圏のガラス器を参照した器形の長頸・折肩・筒腹の「紙槌瓶」の形状。細かい貫入が全面に入る滋潤な釉面であるが、近時の発掘により全面に土銹が有る。全釉の底は五個の小さな支釘焼痕が有り、灰胎質の土が見られる。中央に二行銘「奉成殿 皇后閣」が印刻されている。
汝窯青磁については文献に名が残るものの、その場所が特定できず長い間実態が明らかでなかったが、1986年河南省宝豊県清涼寺で伝世品と同様の陶片や窯道具が発見され、この地がその窯址であることが確認された。伝世の「槌瓶」は2件のみ。両品とも台湾故宮博物院に伝わり、一件は盤口部が破損修理、一件は口縁に銅覆輪された「奉華」銘 乾隆御題が刻された作品。発掘品では唯一、清涼寺窯址出土の作品が知られる。「奉成殿皇后閣」銘は デイヴィッドコレクション蔵品盤も知られる。
汝窯の青磁は北宋の宮廷のために焼かれた御用品といわれており、本刻銘もそれを証明する貴重資料といえる。世の中に名品がないわけではない、それを真賞できる人が少ないのである。したがって名器も民間に埋もれているものがたくさん有る。世に知られているものは何十分の一に過ぎなかろう。そうした名品を見出し、取り上げることは我々中国美術を愛するものの責務であろう。12世紀前半に高麗青磁でも同形瓶が作られている(参照:大阪市立東洋陶磁美術館蔵)。
参照 : 大観 北宋汝窯特展 |