越州窯。
神亭壺は古越磁を代表する器形の一つ。三国(呉)から西晋にかけての南京や浙江省一帯の墓葬から出土する。当時の来世観を示しているとともに、豊穣な江南地方の風景を映している。中国では「穀含罐」(穀物の倉)」 「堆塑罐(塑像をつんだ壺)」 「魂瓶(魂の宿る瓶)」などの名称があるが、日本では神仙の住む館と考えて神亭壺と呼んでいる。後漢代の「五管瓶(五つの壺が組み合わされた瓶・五穀豊穣を意味する)」 から発展した。
本作品でも上に小さな壺が付けられ、そこに穀物に群がる鳥が表わされるのは、農作物の豊かな実りを示している。その下には蛇・トカゲ・亀・蟹・鳥など水に係る生物が貼り付けられている。豊穣への祈り・神仙世界への憧れ・死後の世界観など様々なものがこの壺の中に込められている。罐の肩部より上は楼閣になっており、下層の四組の建物は殿と望楼で構成されているのは稀少。明器である。造形・釉の掛かりなど佳品である。
参照本 : 中国六千年の秘宝展 -上海博物館コレクションから - |