龍泉窯。
きびきびした端正な器形であって、頸部の左右につけられた鳳凰の造形も力強い。釉色は粉晴色で、全体に貫入が入るいわゆる龍泉官窯といわれる品。砧青磁とは違った深い色合いは、味わい深い。南宋官窯の影響を強く受けたといわれる多層釉掛け技術が導入されていることが理解できる。高台の畳付部分は平面ではなく粗く鋭い削りがなされ、灰褐色。
龍泉窯の窯跡は現在200余も発見されており、大部分は製陶が最も盛んだった南宋から元・明初にかけてのものである。今日、国宝・重文指定されている砧青磁はかなり多く、国宝3点・重文13点であるが、まだ指定はされていないけど当然指定される資格のあるのものが随分あり、又一般に知られていない秘蔵品もかなりにあるほど、日本に渡った砧青磁は多い。又、各地の鎌倉時代の遺蹟から、夥しい数の砧青磁の陶片が出土している。近時の発掘品であるからこそ、このような佳品・優品が入手できる事に感謝したい。
鳳凰耳花生は重要文化財が陽明文庫の銘 「千声」、国宝が和泉市久保惣記念美術館の銘 「万声」。日本の指定基準は伝来がまず重要であり、品物本来での隠れた優品は数多いのが実際と言える。この龍泉官窯の評価は、南宋官窯の写しということではなく、独立した高い価値を認められているもの。官窯と龍泉官窯の区別は紫口鉄足が明確で、太い貫入が黒く荒々しく入るものを官窯、土が灰褐色で貫入のおとなしい手を龍泉官窯と判別している。香港著名収蔵家旧蔵品であって、数年がかりの交渉で入手できた珠玉の品。
参照: CC-114 |