磁州窯。
如意頭形に成形した陶板を曲面に仕上げ、方形の台を付けた枕。
周縁に沿って一本の線刻を入れた黒帯を残し、中央に枯れ木に止まる鵲を白地黒剔花(白地黒掻落)の技法で大きく表わす。鵲は喜鵲とも書き、喜び事の到来を告げる瑞鳥といわれるが、如意頭形の「意の如く」の暗示と合わせて幸福の到来を意のままにできるという良い夢見への願いが込められている。
現代の日本人にとって陶器の枕は実用品には思えないが、これも当時の日常の生活用品だった。ベッドの端にも垂れかけるようにして使い、使用しない時は枕面を立てて置いた。台の手前に釉が掛からないのはそのため。磁州窯系陶器の枕には唐子や獅子などの形象をかたどったもの、如意頭形の陶板に方形の台をつけたもの、平面形が豆形・方形・長方形・六角形のものなど、色々な形態があり当時の人々の嗜好を彷彿とさせる。
また文様には辟邪、長寿や富貴・夫婦和合などの吉祥を示した図様や恋の詩誌呪いなどの文字が記されたものなどがあり、良い夢を見たいという庶民の切実な願いをうかがうことが出来る。また墨書が遺存するものもあって、結婚祝いの贈呈品だったことが判る作品もある。同品は出光美術館蔵品が知られ、陶枕収集家渇望品で極めて稀少。
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