球形の珠玉を2匹の辟邪で支え、蓋上には1匹が威嚇する白玉製香炉。受けは咆哮し、両翼でもって香炉台を支える辟邪が左右合体。香炉の台座部はち龍の透かし、胴面は鬼面を大きく陽刻する。蓋部は4匹のち龍を透かし文様とし、頂上には迫真の踏ん張り、威嚇する辟邪を造型している。破綻ない完璧な、正に漢代玉彫工芸の逸品である。良質ホータン産白玉であって、風化により白濁化褐色化が全体に見られ、古玉鑑賞で最も喜ばれる変化をしている。些かの傷も無いのは、近時「天水」郊外墓より出土による賜。
類似した現代中国土産にみられる装飾過剰な嫌味な玉彫の原点の品は何と相違するものであることか。「美術はその時代にその時代を表した物しか生まれない」という基本的なことを教えてくれる。辟邪は天禄と対となって邪悪なものを退ける宇宙の守護獣と考えられ、後漢時代以降、鏡などに多く用いられたほか、墓前の石刻としても用いられた。(両翼をたなびかせ遠吠えするように口を開けて四肢を踏ん張る躍動的な玉辟邪は、台湾故宮博物院のシンボル的存在として著名であり、漢代動物玉彫の逸品。)鋼鉄よりも硬い鉱物、軟玉でもってこれ程の透かし彫りを主とする途方もなく手間のかかる品物をつくらせた人間がいたという、中国とは得体の知れない国である。 |