怪石とは硯の山に見立てた奇石を言う。したがってこれを硯山ともいう。五代南唐の李後主が始めたといわれる長い鑑賞の歴史がある。自然の石があたかも深山幽谷を見るが如き形を呈したものを怪石と呼び、文房具の一つとして賞玩されてきたその根底には文人趣味があった。怪石の条件は第一に形状。机上に乗せて賞玩できるぐらいの大きさが基本であって、峰あり・谷あり・渓ありといった具合に森羅万象の変化を鑑賞した。嵌空が多く、全て人工が加わらない自然石が貴ばれ、台座も怪石賞玩の一つの見せ所である。したがってよい古い怪石には必ず凝った台座が付いており、台座によって時代がわかるくらいである。怪石に限らず、石を眺めるということは東洋人の原点であり終局でもあり、怪石ほど高尚で深みのある世界は他に無く、文房飾りには不可欠の一品といってもよい。安徽省から産出した霊壁石であり、石の形状・台・大きさ全てを満たした怪石と言えよう。
明窓浄机のもと、良い文房具を飾って賞玩することは文人の嗜みであって、そこにただ単に使用に供する目的だけでない賞玩に耐え得る文房具を作り出した。中国古文具の奥深さを見ることが出来る。 |