半円状の漢白玉の一材の前面に十一面観音が浮彫りされる。右肘を曲げて蓮花を持ち、左手は垂下して小瓶をとり、楕円形の頭光を負って蓮華座に直立する。頭上左右には飛天の姿が見える。ふくよかで慈悲深げな表情を湛えた顔貌や伸びやかで適度な張りを持つ肢体、さらに微妙な質感を示す衣といった各部の表現には当時の卓越した造形力をうかがうことが出来る。十一面観音は唐時代を通じて信仰を集めたようで、石や金銅で製作された同時代の作例が少なからず知られている。
溌剌として充実した表現は、中国初唐期の仏教彫刻の気風であり、それは当時の日本仏教彫刻の手本となった。類品は重要文化財の東京国立博物館と根津美術館蔵品が知られる。
参照 : 宮廷の栄華 唐の女帝・則天武后とその時代展 | 根津美術館 百華撰 |