蓮の蕾を抱え、飛翔する天女の浮彫。古代人の理想像である飛天の造型は美しくしなやかな姿態でもって、敦煌莫高窟壁画にも描かれ、行く雲・流れる星の中で淡い雲・天の花を従え千変万化している。天上の音楽に恍惚としている顔の表情に始まり、飛翔状況を表わす足先に至るまで、細微な神経の行き届いた彫刻が小品ながら見事に表現されている。高く評価される北魏芸術の極致といえよう。丸彫であって壁面よりの削り取り。
石彫の持つ独特な味わいは深い魅力を持つものであり、清新無垢の祈りの思いも伝える。目は優しく切れ長で、軽く力を入れたように締めた口元が仄かな笑みを醸す。六朝仏に言う「古式の笑み」である。彫刻として優れた表現であり部分であるだけに、かえって優れた作風が鑑賞される。材は白い筋石文が入る石灰岩の微密で硬い材質。北魏前期に開鏨された雲崗石窟には約5万もの仏像・飛天・供養人が彫刻されている。その後龍門石窟が切り開かれ、統治階級は仏教を広く宣伝した。
現存壁画の総面積4万5000u以上有る敦煌壁画においても、代表作は揺らめく長い帯を身につけて空に舞い上がる飛天と逆さに琵琶を弾きながら躍る仙女であろう。 |