異形な高い髷と髪を細く大きな環状に結い、異様な上着と下裳とは舞妓であることを物語っている。霓裳羽衣の曲−これは玄宗皇帝が月宮に遊び、月女(嫦娥)が桂樹の下で舞うのを見て作ったという。上衣の左右に鰭を漂わすのは霓裳に他ならない。腰は飽くまで細く、袖は飽くまで長い。この世のものとは思えない崇高さは、まさに月女であろう。
両手を前で案じているのはその踊りの一節。その上に朱・黄・青色で表裏全体を美しく彩色する。ひき眉・ひき目・くろ目・唇までよく残り、胸元には粒状首飾も飾られる。裙の裾からは靴の先が見える。実に女らしく気品の溢れた女子俑である。唐代における嫦娥の踊りは唐鏡の文様に暫々見られる。彩色を始めとする保存状態がこれほど良い作品はかって見ない。すらりと端麗な姿は宮中で選び抜かれた美女を思わせる。佳品である。髪型は異なるものの、大阪市立東洋陶磁美術館・永青文庫に類品が知られるが、はるかに凌駕する出来。洛陽収蔵家より数年がかりの懇情で入手。
頭上の大きな髪飾りを持つ類品は陝西省歴史博物館の所蔵品が知られる。ほっそりとした体つき、加飾法から玄宗皇帝の時代よりは早い7世紀の終わり頃の特色が見て取れる。
参考本 :
1. 長安陶俑の精華
2. 平山郁夫コレクション ガンダーラとシルクロードの美術
3. 大唐王朝の華−都・長安の女性たち |