古代中国の門扉や器物の引き手金具。環を咥えた正面形の鬼神の頭を象る。戦国時代に始まり、漢代に普及した。獣鐶ともいう。大きな目・動物の耳・額の上に突出する饕餮文と系統的に繋がる。饕餮が中に持った食物を邪霊から守ったのと同じように、門内や器物を保護する意味が込められ、門扉には獅子頭の形態に変化しつつ、清代に至るまで同形式が保たれている。怪異な獣は鬼神でもあり、その霊力で邪悪のものを退ける役を負ったもの。獣首の上に人面を飾り、人面の両側は二個の相対する蟠龍とし、複雑な捩りを施された一般の丸環と相違する変形環を伴なう。鬼面の眼は紅玉髄、人面の眼はオニックスを嵌め込み、全体をくまなく銀象嵌で装飾する。背面には凸状取付具が施されている。驚くべき極めて精美な作品。
近時天水郊外墓より出土。多数の戦国銅・玉製品が併出している。戦国〜漢時代の数ある銀錯器の中でも群を抜く精巧なつくりである。1968年河北省満城陵墓から類品小型品の出土が知られるが、これ程大型品の用途は恐らく宮殿の扉に取り付けられていたものであろう。鋪首の起源は楚文化圏内にあったと考えられる。環を吊り下げる部分は獣の吐舌部であり、意匠はその墓鎮に通じる。蝋型鋳造である。
参照 : DK-070 |